ファクタリングすると債権はどうなるのか?今さら聞けないファクタリング後の債権の流れ

債権を売却する事によって、現金を入手する資金調達の方法をファクタリングと言います。しかし、一口にファクタリングと言っても、3者間ファクタリングの場合はファクタリング会社が債権を回収しますし、2者間ファクタリングの場合は自社で債権を回収してファクタリング会社に支払います。また債権は具体的なものではないので、ファクタリング契約を結ぶと債権がどうなるのかイメージしにくくもあります。

本記事では、ファクタリングを行うとファクタリングの対象となった債権はどうなるのか、ファクタリング後の債権の流れについて説明します。

【契約と債権・債務】

通常、企業同士の約束毎を法律では「契約」と呼びます。企業間取引によく用いられる契約としては例えば。建物の建設や部品の製造を請け負う時に結ばれる「請負契約」、事務作業を代行する際に結ばれる「準委任契約」、商品を売買する時に用いられる「売買契約」などがあります。

このような契約を結ぶ際には、何か書面を発行したり、物品を相手に預けたりする必要はなく、口約束だけでも両者が合意すれば契約が成立します。このように口約束だけで成立する契約を諾成契約といいます。つまり、仕事を請け負ったり、何か仕事を引き受けたりする際に口約束で何も書面を交わしていないとしても実際には契約が成立しているのです。

契約を結ぶと契約の当事者は債権と債務を負う事になります。債権とは相手に何かを請求する権利で、債務とは相手の言うとおり何らかの事を行う義務の事を指します。

例えば、A社が商品aを100万円でB社に販売するという売買契約を結んだとします。この時にA社はB社に対して代金の100万円を支払って欲しいという債権とB社に商品aを引き渡さなければならない債務を負う事になります。一方でB社は商品aをA社に引き渡して欲しいと請求する債権とA社に100万円を支払わなければならない債務を負う事になります。どのタイミングでAがBに商品aを渡すのか、BがAに100万円を支払うのかは、AとBが売買条件の交渉をして契約をする際に決定します。とくに約束が無ければ原則としてAがBに商品aを渡すのとBがAに100万円を支払うのは同時という事になります。

この債権・債務には具体的な形がありませんが、両者は権利・義務を持っているという事には注意が必要です。権利や義務は目には見えませんが、原則として第三者に譲り渡す事ができますAがBに対して債権をCに渡したのでCに100万円を支払って欲しいという事は可能なのです。ちなみに、この時に注意するべきなのは、必ずしも債権・債務は自由に他人に譲り渡せないという事です。典型的なケースでは契約書であらかじめ、債権・債務を第三者に譲渡する事ができないという風に決めていれば、当事者の片方が心変わりして債権を第三者に譲渡したくなったとして勝手に譲渡する事ができません。

【ファクタリングすると債権は誰のものになるのか】

ファクタリングとは、この債権を売買する契約です。すなわちAが保有しているBから100万を貰う権利をCに対して90万円で譲るという約束をAとCで行ったときに結ばれるのがファクタリング契約なのです。この場合AはBから100万円受け取れる債権を失って90万円を得て、Cは90万円を失ってBから100万円受け取れる債権を得る事になります。

この場合注意しなければならないのが、Aが債務を履行してBの債権が消滅した状態でないとAはCとファクタリング契約を結ぶ事は困難です。Cの立場からすれば、既にAが商品aをBに渡した後でないと、AがBに提供した者が約束と違うとして契約が取り消されるかもしれません。つまりCはAがBに対して債務を履行する事に対してのリスクを持たなければならない事になります。

このような理由からファクタリングできる債権とは一般的にファクタリングの対象となる債権に対応する債務が既に履行されている債権に限られるという事になります。つまり、ファクタリングできる債権とは売掛金など一方的に受け取れる債権であるという事になります。

【債権を売買する時のルール:債権が二重に譲渡されると?】

このようにファクタリングすると、債権が第三者に移動する事になりますが、もしも債権を自由に移動できると、それはそれでとても不便です。例えば車を売買する場合なら、車が買い手の元にあれば第三者は車が買い手のモノである事がわかりますが、債権は目に見えないので、CがAから債権を購入したとしても、AがDに対して同じ債権を売りますと言ってしまえば、CとDにとってはお互いの事を知らない限りAが本当に債権を持っている事が確認できないからです。この場合CとDはどちらがAから債権を買い取ったか争う事になります。この場合CとDのどちらが債権を取得できるかは、どちらが第三者に対する対抗要件を備えているかによって決まります。債権の譲渡の場合は、確定日付のある証書によって債務者に対する通知を行うか、債務者の承諾を得る、もしくは法人が金銭債権を譲渡する場合は、債権譲渡登記を行う事によって第三者に対抗できます。つまり、CとDのいずれか、この対抗要件を先に満たした方の債権となるのです。

ちなみに、ファクタリング契約を行う場合は、ファクタリング会社が第三者への対抗要件を満たすように手続きをしないとファクタリング契約は成立しません。確定日付のある証書によって債務者に対する通知を行うか、債務者の承諾を得るというのは3者間ファクタリングで一般的に利用される対抗要件で、債権譲渡登記を行うというのは2者間ファクタリングで利用される対抗要件です。

ちなみに、平成10年まで2者間ファクタリングはなくファクタリングと言えば三者間ファクタリングだけでした。というのも、債権譲渡登記制度が開始されたのは平成10年の事で、債権譲渡に関する対抗要件は得るためには確定日付のある証書によって債務者に対する通知を行うか、債務者の承諾を得る方法しかなかったので、どうしても債務者の協力がなければ第三者への対抗要件を満たす事ができなかったのです。しかし、債権譲渡登記制度が開始された事により債権譲渡登記をすれば債務者の協力が無くても第三者への対抗要件を備える事が可能になったので2者間ファクタリングという手法が発明されました。これにより債務者に気づかれる事無く、不債権者はファクタリングを利用できる事になったのです。

【債権の所有権者と債権回収について】

上記のように、2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの債権の譲渡に関する第三者への対抗要件について説明しましたが、2者間ファクタリングにしても、3者間ファクタリングにしても、債権は利用者からファクタリング事業者に移動します。2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの大きな違いは誰が債権を回収するかという事です。

2者間ファクタリングの場合は、債務者に債権が譲渡された事に気づかれないように、本来ファクタリング事業者が行う債権回収を元の債権保持者である利用者が行います。一方で3者間ファクタリングの場合は利用者が既に債権が移動した事をしっているので、ファクタリング事業者が直接債務者から債権を回収します。

債権回収の際に特に気を付けるのは2者間ファクタリングの場合です。2社間ファクタリングの際に利用者が回収している債権は自社の債権ではなく、ファクタリング事業者の債権です。つまり自分のお金を回収しているわけではないのです。この時にトラブルになるケースが2者間ファクタリングで回収したお金を自社の為に使った場合です。特に2者間ファクタリングを行おうとする会社は手元の運転資金が乏しい事が多く、直近の運転資金に回収してきた売掛金を充填したいと思いがちですが、これは非常に罪が重い事です。通常、借りたお金を返さないという事は債務不履行という事で民事訴訟の対象とはなりますが刑事事件にはなりません。しかし、ファクタリング事業者の代わりに回収して来た金銭を勝手に使うと言う事は業務上横領が成立する可能性があり、民事訴訟の対象になるだけではなく、刑事事件にもなりえるのです。このような理由からいくら元々自社の債権であったからとしても勝手に使う事は許される事ではありません。

【債権を回収できない場合は?】

債権が利用者からファクタリング事業者に移動しているという事は債権回収リスクもファクタリング事業者が責任を負うことになります。つまり、たとえファクタリング事業者に売却した債権が回収不能になったとしても利用者は責任を持って、ファクタリングした際に支払われた金銭を変換したり、代わりに債務者から債権を回収しなければならないという事はありません。

仮に、債権回収リスクが利用者が負担する事になっていれば債権自体を利用者が保有している事になるはずなので、ファクタリングが成立していないという事になります。この場合は、ファクタリング契約ではなく、債権担保金銭消費貸借契約が結ばれている事になるのでファクタリングの手数料とされている金額が制限利息を越えていれば違法な貸付となります。

ちなみに、この手数料が法定利息の範囲内ならファクタリングしたけれども債権が回収できない場合、自社がリスクを背負う場合もあります。償還請求権(ウィズリコース)ファクタリングという種類のファクタリングだった場合、利用者が支払い責任を負う事になります。

償還請求権とは、もしもファクタリング事業が買い取った債権をきちんと回収できなかった場合に、利用者に対して債権を買い戻す事を請求する権利の事で、償還請求権つきのファクタリングをウィズリコース、償還請求権のないファクタリングをノンリコースと言います。ファクタリング契約を行う際にはそのファクタリングがウィズリコースなのかノンリコースなのかを確認した上で契約を結ばないと、後で債権が回収できなかった時に利用者は痛手を負う事になります。

【ファクタリング後の債権の流れについてまとめ】

以上のようにファクタリング契約を行った際の債権の流れについて説明してきました。例えば口約束であって契約書を交わしていない仕事についても契約は有効に成立します。契約が成立すると契約の当事者は契約に内容に合わせた債権と債務を負う事になります。ファクタリングとはこの契約によって発生した債権を売却する事によって、代金を得る資金調達の方法です。

ここで注意しなければならないのが債権であればなんでもファクタリングできるというわけではないことです。ファクタリングをする為には債権に対応した債務がない事が必要になります、例えばAは商品aと引き換えにBから10万円を貰うという売買契約をした場合、同時履行の抗弁権という権利が発生します。つまり、AはBに10万円を支払うように請求しても、同時に商品aを引き渡せと請求されるのです。この状態ではファクタリングは成立しません。CがAの債権を8万円で買ってもBに商品aを引き渡さなければ10万円を請求できないからです。このようにファクタリングが行われるためには対応する債務を既に履行している売掛金などに限られます。

また、債権はモノではないので見る事ができません。よって、利用者は同時に複数の人に譲渡してもばれにくくなっています。複数の人に債権が譲渡された時に誰が所有権を得るのかは第三者への要件を満たしているかによって決まります。具体的には、確定日付のある証書によって債務者に対する通知を行うか債務者の承諾を得る、または法人が金銭債権を譲渡する場合は、債権譲渡登記を行う事のいずれを行う事が優先的に債権を取得する為には必要です。

ちなみに、ファクタリングと同じような契約として、債権を担保にした融資があります。この2つの違いはファクタリングが債権の所有権のファクタリング会社に移転するのに対して、債権担保融資の場合は債権の所有権はそのまま利用者が持ち続けます。ただし、ファクタリング契約だからと言って、必ずしも売却した債権の回収に責任を持つ必要が無いという事ではありません。償還請求権付のファクタリングは、債権が回収できなかった場合、利用者が責任を取る事もあるので気を付けてください。

また、2者間ファクタリングの場合、債権の回収は利用者が行う事になりますが、勝手に回収した金銭を使うと業務上横領になりかねないので、かならずファクタリング事業者に納めるようにしてください。

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